洋上風力発電とは?水中ドローンBlueROV2は洋上風力発電での実績があります。

洋上風力とは?

日本各地の海で「洋上風力発電」のプロジェクトが進んでいるのをご存知ですか?

洋上風力発電は、巨大な風車を建ててエネルギーを生み出すもので、日本の地理的条件に適したクリーンエネルギーとして官民をあげて導入が進められています。

ここでは高い潜在能力が期待される「洋上風力」についてご紹介。日本での運用やドローン等ロボット業界との関係性に迫っていきます。

洋上風力の建設や点検で活躍が期待されている水中ドローン

水中ドローンBlueROV2は洋上風力発電の建設で実際に使われました

BlueROV2の8スラスタータイプを使用してフィルダーユニットの確認やモノパイル、海底ケーブルなどの確認に使用した実績があります。

洋上風力発電で使われたBlueROV2

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洋上風力発電とは

洋上風力発電の仕組みをおさらい!

洋上風力発電とは、海の上に設置した風車で風を受け、風の運動エネルギーでプロペラをし、その回転エネルギーで発電機を回して発電する仕組みです。「海洋上」の「風力発電」が、洋上風力発電(洋上風力)と呼ばれています。洋上=offshoreから、オフショア風力発電とも。

ここでいう海洋上の定義は「水の上」であり、フィヨルドや港湾、大きな湖なども対象となります。

これまで国内の風力発電は陸上で行われてきましたが、一般に洋上の方が一定の風を受けられるほか、生活エリアから離れたところに設置するため、景観や騒音といった問題が起きにくいメリットがあります。

国内では、台風被害などのリスクや法規制などが導入のハードルとなってきましたが、技術の進歩による耐久性の向上や関連する法整備(再エネ海域利用法)により、本格導入への動きが活発化してきています。

日本国内で大注目の洋上風力発電その理由は?

洋上は陸上より地形や建物の影響を受けづらいため大きな風力が得られ、安定した発電が可能となります。景観や騒音問題も飽和でき、立地確保もしやすいため大型風車が導入しやすいといったメリットがあります。

2050年カーボンニュートラルで洋上風力発電が注目される

洋上風力が注目される背景

日本では今、洋上風力発電が次世代のクリーンエネルギーとして、大きな注目を集めています。

大きな理由の一つは、2020年に政府が宣言した「2050年カーボンニュートラル」です。

脱炭素社会に向けて、2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量の実質ゼロを目指す目標です。

実現のための方策として、洋上風力発電は、水素や蓄電池などとともに重点的に取り組む分野として挙げられています。

2021年には日本の4ヶ所の促進区域(秋田県能代市、三種町および男鹿市沖、同県由利本荘市沖、千葉県銚子市沖)で公募が行われ、事業者が決まりました。2022年12月には、秋田県沖の日本海で、初めての本格的な商業運転が始まっています。

2040年までに原発30~45基分にあたる30~45ギガワットの導入を目指す

日本政府は2020年12月に「洋上風力産業ビジョン」をまとめ、2040年までに原発30~45基分にあたる30~45ギガワットの導入を目指すという考えを打ち出しました。(2021年時点での洋上風力は0.4万キロワット)

「再エネ海域利用法」により最長30年間の海域占用が認められて事業環境が整ったことから、現在いくつかの計画が進行中です。

国の事業のためまだ大々的に報道されるようなことはありませんが、民間企業等も加わり、少しずつではあるものの着実に本格導入に向け動き出しています。

洋上風力発電の基本的な仕組み

洋上風力発電の基本的な仕組み

洋上風力発電の仕組みは、陸上での風力発電と大きく変わりません。

風力発電の基本的な仕組みとは、次のようなものです。

  • 風の力でブレード(羽根)を回転させる。
  • 回転を「ナセル」と呼ばれる装置に伝える。
  • 発電機が回転の力を電気に変換する。
  • 発電された電気を送電する。

※ナセルとは、ブレードに取り付けられている装置を指し、内部には増速機、発電機、ブレーキなどが搭載されています。

ブレードが風を受けることで、ナセルの動力伝達軸に力が伝わり、ナセル内部の機器にも伝達していくのです。

風力発電基本的な仕組み
編注:引用元 関西電力「風力発電の仕組み」https://media.kepco.co.jp/_ct/17524643

一般に、陸上よりも強い風が一定に吹く洋上では、より大きなエネルギーを得ることができます。

そのため、洋上風力発電の設備は陸上に比べて大型で、塔の高さは約120〜200メートルが主流です。

近年は技術開発に伴って巨大化する傾向にあり、東京タワー(333メートル)に迫る規模の塔も開発されています。

台風にも耐えられる大型洋上風力発電

日本は年間通して台風被害が大きいため他国に比べると設置難易度が高くなっていますが、2021年4月に米ゼネラル・エレクトリックが大型洋上風力発電機で初めてとなる、台風にも耐えられる性能を示す国際認証を取得したことが報道されました。

これにより日本が認証を取得し設置できるようになれば大量導入される可能性もあります。

陸上風力発電と異なる点

国内ではこれまで、山地や沿岸などの陸上で風力発電が導入されてきました。2021年末時点の発電量は累積4.58GW(ギガワット)です。

政府は「洋上風力産業ビジョン」において、2030年までに10GW、2040年までに30〜45GW程度(原子力発電所30〜45基相当)という目標を掲げています。

目標の達成には、これまでの陸上風力発電を遥かに上回る規模での洋上風力発電施設の整備が不可欠です。

一方、洋上風力発電には、陸上風力発電とは異なる点もいくつかあります。

(1)送電方法

洋上風力発電で発電した電気を陸上の電力網に送るため、海底に送電ケーブルを敷設する必要があります。

海底ケーブルのコストは地形や水深、潮の流れなどによって変化し、施工後も定期的な保守点検をしなければなりません。

(2)基礎部分

風車の構造自体は陸上風力発電と変わりませんが、風車を支える基礎部分は、洋上風力発電ならではの特殊な構造となっているため、施工にも相応の技術水準を求められます。

基礎部分の構造によって、洋上風力発電は大きく2種類に分けられるため、次の項目で解説します。

2つのタイプがある洋上風力発電

洋上風力発電には、基礎部分の構造の違いによって、「着床式」と「浮体式」の2つのタイプがあります。

2つのタイプ(着床・浮体)

編注:引用元 『産総研マガジン』(2022年11月9日)「洋上風力発電とは?」https://www.aist.go.jp/aist_j/magazine/20221109.html

(1) 着床式

支柱が海底に到達しているものを指します。海底に杭などの基礎構造物を埋め込み、風車を支える方式です。

これまでの洋上風力発電で広く用いられ、すでに運用されているほとんどは着床式と言われています。技術的・経済的な観点から、水深が比較的浅い場所に適しており、目安は深さ50メートル以内です。

着床式の洋上風力発電は、基礎構造物の形状によってさらに分類できます。

例えば、①重力式、②モノパイル、③ジャケットといったものです。

それぞれ海底の地盤の特性によって適地が異なり、例えば重力式は平坦な地形で、ジャケット式は傾斜のある地形に適していると言われています。

着床式の分類

編注:引用元 大林組「スカートサクション」 https://www.obayashi.co.jp/solution_technology/detail/tech_d200.html

(2) 浮体式

洋上の浮体構造物の上に支柱を置き、海底にシンカーでつなぎとめて風車を支える方式です。風車を完全に固定するのではなく、あくまで浮いている状態ですが、シンカーでつなぎとめることで、大きく流されるのを防ぎます。

着床式に比べると、水深の深い場所でも運用可能なため、より広い海域で洋上風力発電を導入できること、基礎部分を埋め込む工事にかかるコストを抑えられることなどのメリットがあります。

一方、新しい技術のため、実用化はこれからの段階です。浮体式も形状によって、①セミサブ型、②スパー型、③TLP型などに分類することができます。

浮体式の分類

編注:引用元 大林組「スカートサクション」 https://www.obayashi.co.jp/solution_technology/detail/tech_d200.html

普及の鍵は浮体式にあり?

洋上風力発電は、陸上に比べて大規模な導入が可能で、今後のコスト低減や経済波及効果も期待されていることから、再生可能エネルギーの中心を担う存在として注目を集めています。

一方、台風などの荒天や、海底を震源とする地震といった災害リスク、漁業資源などの海洋環境への影響といった点に留意する必要があることも事実です。

また、現在の主流である着床式の建設には、基礎構造物を設置するために多額のコストを要しています。水深50メートル以内という技術的・経済的な条件もあるため、適地が限られてしまうことも課題です。

これらの課題に一石を投じることが期待されているのが、浮体式の本格導入です。

建設コストや災害リスクの低減、導入適地の拡大によって、より多くの海域で大規模な施設を建設できるようになると考えられています。

日本は浮体式の技術開発をいち早く進めてきた経緯があり、実証実験も行われてきました。

2022年12月現在、長崎県五島市沖で、浮体式としては国内初の商業運転に向けたファームの建設が進んでいます。

浮体式の本格導入によって、日本における洋上風力発電は一気に普及する可能性があり、すでに保守点検などに用いられている飛行・水中ドローンの活躍の場も、ますます広がっていくことでしょう。

【参考文献】産業技術総合研究所『産総研マガジン』2022年11月9日
「洋上風力発電とは?」
https://www.aist.go.jp/aist_j/magazine/20221109.html株式会社南条製作所
「洋上風力発電の仕組みとは?」
https://www.nanjyo.co.jp/pickup/blog-offshore-wind-power-structure/

洋上風力とロボットの関わり

洋上風力とロボットの関わり

建設や設置後の点検に欠かせないのが水中ロボットです。水上利用に適したものが使われるため、この分野の発展も期待できます。

特に水上の無人艇は安全性にも優れるため、点検作業には最適です。弊社で扱うようなROV(水中ドローン)も活躍できることでしょう。水中内の基礎部分を定期的に点検し、不具合等の早期発見も可能となります。

民間の無人潜水艇は基本的に人間が遠隔操作しますが、安全性やコスト面でのメリットが従来の方法よりも優れています。現在多くの国の機関がこういった無人艇を所有しており点検作業等に参加しつつ、開発がすすめられています。

ちなみに無人艇はあくまで点検等の作業であり、風車を組み立てるほどの力はありません。それにはそれ相応の大きな船が必要となります。以下で紹介する「ザラタン」がまさにそれです。

洋上風力建設に使われる「ザラタン」とは?

SeajacksZaratan

2021年4月には風車備え付けのための巨大自航式作業台船「ザラタン」号が日本で初めて秋田港に入港しました。秋田、能代両港湾域で計33基の大型風車を設置予定です。

洋上風力発電事業がチャーターしたザラタンは英シージャックス社系列のもので全長109m×幅41m。船体を貫通する全長約80mの4本の脚をたてたまま自航し、最大深度55mの海底に脚を立て、船体を海面に持ち上げて風車の備え付け作業を行います。

ちなみに「ザラタン」とは空想上の海亀(蟹)のこと。巨大で脚を持ち動く様がまさにぴったりの名前です。

日本での洋上風力事業はまだ始まったばかり。今後少しずつ話題になる機会も増え、その用語が身近に感じられる日もそう遠くないことでしょう。洋上風力とそれにかかわる事業の発展に期待しつつ、われわれも日々ロボットおよびドローン事業にいそしんでまいります。

秋田県に風力発電が多いのはなぜ?

秋田県に風力発電が多い

「秋田県」と聞くと、伝統行事や農作物といったものを連想する方が多いかもしれません。しかし近年は大規模な新産業プロジェクトが行われており「風力発電導入量」が全国トップを誇っています。

そこで今回は、なぜ秋田県に風力発電が多いのかを徹底的にご紹介します。

秋田に風力が多い理由その1「日本海側特有の風」

日本海側沿岸部は風が強く降雪が少ないという特徴があり、秋田はまさにそれに該当します。

全国的にも海岸沿いや日本海側に風力発電が作られているケースがほとんどで、風土が風力発電の設置に、どれだけ重要かがよくわかります。

ちなみに内陸部は風が弱まるものの降雪量は増えます。広い面積があっても風力発電の設置に最適な場所はごく一部なのです。

秋田に風力が多い理由その2「FIT制度の開始」

中小企業でも導入しやすい太陽光発電と違い、巨大な風車を建設しなければならない風力発電はとにかく資金が必要。その敷居の高さから、日本でなかなか浸透していませんでした。

しかし2012年から国による再生可能エネルギーのFIT制度(固定価格買い取り制度)が開始されました。これには設備導入時に一定期間の助成水準が法的に保証されるなどといったメリットがあり、世界的にみても再生可能エネルギーの普及促進効果が高い制度といわれています。

つまり売電による将来的雇用の安定が見込めることになり、導入に前向きな企業や銀行などが増え、資金調達が可能となったのです。

秋田に風力が多い理由その3「資源を利用した地域再生」

資源を利用した地域再生

近年の秋田県の人口は100万人を割りこみ、全国的にみて人口減少が最も進んでいるエリアです。

この危機的状況を脱するべく地元企業や銀行が協力し、地域再生をかけて始まったのが「秋田県新エネルギー産業戦略」です。

このプロジェクトは「今ある資源を使って雇用拡大につなげる」のが狙いであり、今まで厄介なものとして扱われてきた「強い風」を利用できるのがメリットです。

もともと秋田には風力発電は導入されていたものの、ほとんどが県外資本でした。

これを県内資本とし、利益を県内に還元できるようにすることで秋田の中心的産業にすることが狙いです。

風力発電はFIT制度の対象となる再生可能エネルギーであるため、風土と地域が抱える問題、国による制度、これらすべての条件がそろったことで大規模なプロジェクトが始動できることとなったのです。

秋田に風力が多い理由その4「洋上風力の建設」

洋上風力の建設

洋上風力とは海洋上に設置された風車で発電するもので、海の上は風を遮るものがないことから陸上に設置するよりも効率的であるといわれています。

洋上風力はヨーロッパでの普及が目覚ましいものの日本は台風が多いために、今まで国による試験運転のみ行われていました。

しかしFITの開始や、台風にも耐えられる大型風車ができたこともあり、日本の洋上風力の可能性が一気に見えてきたのです。

秋田県で本格運用を見据えた洋上風力がまさに今、全国に先駆け建設中です。

秋田に風力が多い理由その5「日本初の民間洋上風力」

現在建設中の洋上風力は、民間では日本初となります。

秋田洋上風力発電株式会社
https://aow.co.jp/jp/

秋田県の場合は地元企業が資本となることで、大規模なプロジェクトとして活動を支えて先の雇用拡大と安定につなげるしくみとなっており、民間ならではの機動力で順調に建設が進んでいます。

ちなみに完工後20年間は、全量を東北電力株式会社に売電することが決まっています。商業運転開始は2022年12月予定です。

これにより、今後の全国的な洋上風力導入の期待が高まります。

水中ドローンを使った風力発電

われわれのような小さなドローン会社も、近年インフラ設備の保守・点検作業が増えつつあります。秋田県は仙台から近いこともあり、今後も関わる機会が多いことでしょう。

水上風力であれば水中ドローン(ROV)の活躍も期待されます。これにより水中ドローンの性能や需要が一気に向上する可能性もあります。

いつでもドローンを使った風力発電の保守・点検等の作業ができるように、われわれも日々精進してまいります。

世界的に見た洋上風力の歴史と設置状況

世界的に見た洋上風力の歴史と設置状況

デンマークが1991年に史上初めて建設し、現在はヨーロッパ全体で大規模に設置されています。

2015年ころまではほぼヨーロッパのみでしたが、近年は地球温暖化問題解消につながるとして関心が高まり、急速に成長しています。

世界的にみるとイギリスの総発電能力がずばぬけて高く、市場的には中国とアメリカでの成長が特に期待されています。

日本では2010年3月に茨城県で初めて港湾外へ設置され稼働しました。まだ本格導入はされておらず、国による実証事業になっています。

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