水中の音速は、DVL・マルチビーム測深機・サイドスキャンソナー・USBL など音響機器の距離・位置精度を左右する基礎パラメータです。音速を誤ると、測深・測距・座標のすべてに系統的な誤差が乗ります。
このツールは Mackenzie (1981) の 9 項式で、水温・塩分・深度から海水中の音速を算出します。代表的な海域プリセット、各パラメータが音速へ与える感度(偏微分)、往復走時の目安も確認できます。
入力パラメータ
感度(現在の条件での偏微分)
| 変化量 | 音速変化 Δc | 概算 |
|---|---|---|
| 水温 +1 °C | +3.118 m/s | 温度の影響が最も大きい |
| 塩分 +1 PSU | +1.186 m/s | 比較的緩やか |
| 深度 +100 m | +1.632 m/s | 深くなるほど速くなる |
※ Mackenzie (1981) 9 項式を使用。有効範囲: 水温 −2〜30 °C / 塩分 25〜40 PSU / 深度 0〜8000 m、精度 約 0.07 m/s。より高精度な計算が必要な場合は UNESCO (Chen-Millero) 式 や TEOS-10 を使用してください。
使い方
- 水温・塩分・深度を入力水温 (°C)・塩分 (PSU)・深度 (m) を入力します。環境が不明ならプリセット (日本近海沿岸・温帯表層・深海など) を選んでください。
- 音速と感度を読む音速 (m/s) と、水温 +1°C / 塩分 +1 PSU / 深度 +100 m あたりの感度が表で表示されます。
- ソナー距離計算片道距離 (km) を入れると、往復時間 (ms) が計算されます。DVL やマルチビームの距離補正に使えます。
計算式・原理
Mackenzie (1981) の 9 項経験式で、水温 T・塩分 S・深度 D から海水中の音速 c を求めます。
T = 水温 (°C)、S = 塩分 (PSU)、D = 深度 (m)。有効範囲:水温 −2〜30 °C / 塩分 25〜40 PSU / 深度 0〜8000 m、精度 約 0.07 m/s。
結果の読み方
音速は水温の影響が最も大きく、本式では低水温で約 +4、15 °C 付近で約 +3 m/s/°C 変化します(感度表で現在条件の Δc を確認できます)。塩分の寄与は緩やかで、深度が増すほど(水圧で)音速はわずかに増加します。ソナーや DVL・マルチビームの距離は「音速 × 走時 ÷ 2(往復)」で求まるため、実海域の音速を用いないと距離に系統誤差が出ます。淡水・汽水(塩分 25 PSU 未満)など有効範囲を外れた入力には ⚠ 警告が表示され、その値は参考値です。
計算例
例:水温 15 °C・塩分 35 PSU・深度 0 m(温帯表層)の場合
| 基準項 | 1448.96 |
|---|---|
| 水温の寄与 (T=15) | 4.591×15 − 0.05304×15² + 2.374×10⁻⁴×15³ ≈ +57.73 |
| 塩分の寄与 (S=35) | 1.34×(35 − 35) = 0 |
| 深度の寄与 (D=0) | 0 |
| 音速 c | ≈ 1506.69 m/s |
温帯表層(15 °C / 35 PSU / 0 m)の標準的な海水音速 ≈ 1507 m/s。プリセットで熱帯・深海・日本近海などをワンクリックで比較できます。
用語
- 音速 (Sound Speed)
- 水中を音波が伝わる速さ。海水では概ね 1450〜1550 m/s で、水温・塩分・水圧(深度)により変化する。
- PSU (実用塩分)
- Practical Salinity Unit。海水中の塩類量にほぼ対応し、標準海水は約 35 PSU。
- Mackenzie 式
- 1981 年に提案された水中音速の 9 項経験式。広い海洋条件で精度 約 0.07 m/s。
- 往復走時 (Two-way Travel Time)
- 音波が対象まで往復するのにかかる時間。距離 = 音速 × 走時 ÷ 2。
- DVL (Doppler Velocity Log)
- 海底からの反射音で対地速度を測る装置。音速の誤差が距離・速度精度に直結する。